この度は、妹の相続手続の節に、貴社の相談員・先生方のご尽力をいただき、
手続きもスムーズに運び、完了しましたこと、感謝いたしております。
本当にお世話になり、ありがとうございました。
これで私も気持ちが少し楽になれると思います。まずは、御礼まで。
相続手続
事例 98死んだ我が子の相続手続

Aさん
自分よりも子供が先に逝ってしまうなんて・・・とてもじゃないけれど、相続手続が手につきません。手伝ってもらえないでしょうか?
親より先に子が死亡した場合の相続権はどこにいくのでしょうか?
ご自身の子供の相続手続を行わなければならないほど、悲しい相続手続はありません。今回の依頼人Aさんは、息子のXさんを亡くされ、そのご相続のお手続きの相談で、センターにみえました。
Xさんは定年後に病気が見つかり、60歳過ぎの若さで亡くなりました。生涯独身でお子様はいませんでしたので、相続人は第二順位の直系尊属の父母となります。Xさんのお父様は既に亡くなっていましたが、お母様であるAさんがご健在でした。高齢なので、Xさんの妹Yさんにも同席していただき、Aさんにお会いすることとなりましたが、90歳を超えてなお、認知症を患うこともなく、都営住宅にお一人でお住まいになられていました。
さらに、自分よりも子に先立たれることは大変つらいことですが、Aさんは長男Xさんの死をしっかりと受け止めておいでです。遺言は遺されていませんでした。Yさんの同意のもと、相続手続を受託しました。
相続財産は返済を終えたばかりのマンション一室、預貯金、死亡保険金受取人にはYさんが指定された生命保険でした。相続税は相続財産が基礎控除額を超えた場合に申告が必要となりますが、生命保険金については相続人一人当たり500万円の非課税枠があります。Xさんの場合、相続人が一人の為、基礎控除額が3,600万円にしかなりません。
相続財産の不動産や預貯金に生命保険を加算すると、基礎控除額を上回ることとなりました。
Yさんから、「生命保険の非課税枠が適用されるのでは?」とご質問をいただきましたが、死亡保険金の受取人が相続人でない場合の適用はなく、葬儀費用等を差し引いても、基礎控除を超える為、相続税の申告が必要になると説明しました。
一方、一人暮らしであったXさんに同居の親族はいないものの、母Aさんは長らく都営住宅にお住まいで、ご自身や配偶者が所有する家屋に住んでいたことはなく、このマンションを売る予定もありません。
このような場合、相続税の申告において、「小規模宅地の特例」が適用され、土地の評価が減額されます。
結果として相続税の申告は必要なものの、相続税の負担は免れました。また、Xさんは亡くなる前、Yさんに預貯金の一部の公益法人への寄付を依頼していました。YさんはAさんと相談し、Xさんの遺志を実現されるということでした。
◆参考◆
●宅地等の評価額について
被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業又は居住の用に供されていた宅地等について、要件を満たせば、一定面積まで土地の評価額が減額される場合があります(小規模宅地等の特例)。被相続人の居住の用に供されていた宅地(自宅)については、相続により被相続人の配偶者が取得する場合、あるいは、被相続人と(一棟の建物に)同居していた親族が取得し申告期限まで保有している場合には特例の適用がありますが、これらの方がいない場合でも、取得した相続人が一定の要件を満たせば、特例が適用される場合があります。この特例には様々な細かい要件があり、また税制改正により取り扱いが変わることがあるので注意が必要です。
●生命保険の課税について
被相続人の死亡により受け取る生命保険契約の保険金等で、被相続人が保険料を負担したものは、みなし相続財産として相続税の対象となります。但し、相続人が受けた死亡保険金額については500万円×法定相続人の数まで非課税です。この場合、相続人ではない方が受け取った場合は非課税となりません。Yさんは相続人ではないので、保険金全額が課税対象となりました。 なお、相続や遺贈によって取得した財産を国や地方公共団体又は特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄付した場合、その寄付した財産は相続税の対象としないという特例があります。
東京都 Sさん
今回相続の件でお世話様になり、ありがとうございました。
個人ではとても出来ない書類を揃えていただき、感謝しております。
勉強にもなりました。
また、相談することがありましたら連絡させていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
事例 97遺言書の必要性を痛感した夫の相続

Aさん
遺言書作成を拒否し続けた夫が、ついに遺言書作成しないまま他界しました。どんな手続きから始めればいいか途方に暮れています・・・。
遺言書があれば遺産分割協議もスムーズに進みます
ご主人であるXさんの相続手続のご相談に来られたAさん。
ご夫婦にはお子さんが一人いらっしゃいましたが、結婚も子を持つこともなく、既に病気で亡くなっています。その後、Xさんが病気で入退院を繰り返すようになった際、Aさんはお子さんを病気で突然に亡くされたご経験から、Xさんに遺言を書いてほしいと何度もお願いしたそうですが、「遺言なんて縁起でもない!俺に早く死んでほしいのか!」と言われてしまい、それ以上話が出来ないまま、Xさんが亡くなられてしまったとのことでした。
Xさんの相続財産は、自宅不動産が主で、預貯金はあまり残されていませんでした。
相続人全員で遺産分割をしなければならない、と理解しつつも、Aさんは「自宅は大切な場所だし、今後の生活もある。売却をせず、自分名義にして守っていきたい」とお考えでした。手元に生活の資金も残すとなると、Aさんが法定相続分以上を相続する、という内容の遺産分割協議が必要になります。
Xさんのご両親は既に亡くなられており、相続人はAさんの他に、Xさんの兄弟姉妹5人ということでした。依頼を受けて戸籍を取寄せて確認すると、実は母親の違う姉(Yさん)がいたのですが、Yさんも既に亡くなっており、そのお子さん3人がXさんの相続人となることが判明。
Aさんは、相続人の多さに大変心配していらっしゃいました。
それでもなんとか皆様と連絡をとり、「ご自宅はAさんに」ということで協議がまとまりました。
ところが、分割協議書を作成し、皆様から押印をいただく段階になって、なかなか押印に応じてくれない相続人が一人…。
数か月が経過し、このままでは家庭裁判所に調停申立てをしなくては、と諦めかけていたところ、やっと押印に応じてくれることとなりました。
ほっとしたのも束の間、手続が進まないでいた間にXさんの弟のZさんが亡くなってしまい、Zさんの相続人3人も数次相続人として、押印が必要となりました。すっかり憔悴しきったAさんを励ましながら、最終的には、なんとかご自宅をAさん名義に変えることができました。
「主人が遺言書を書いてくれていたらこんなに大変な思いをしなくてよかったのに。」
というAさんの言葉が印象に残っています。
◆参考◆
●遺言書の必要性
お子様がいないご夫婦のどちらかが亡くなった場合で、ご両親や直系尊属(第二順位の相続人)が既に亡くなっていると、相続人は、配偶者と故人の兄弟姉妹となります。さらに、その兄弟姉妹も亡くなっていると、その甥姪が第三順位の相続人となります。
遺言がなければ自宅不動産の名義変更にも、相続人全員による遺産分割協議が必要となりますが、分割内容が合意に至らない、押印に応じてくれない、相続人自体の所在が分からない等、多々リスクがあり、難航することも少なくありません。お子様がいらっしゃらない方には、遺言書の作成は検討に値することだと思います。
●民法(相続法)の大幅改正
民法のうち相続法の分野について大幅な改正が行われて久しいですが、その中で、配偶者の居住権を長期的に保護するための方策として、「配偶者居住権」という権利が創設されたことは記憶にも新しいでしょう。
配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身又は一定期間、配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権利です。遺産分割における選択肢として、また被相続人の遺言等によって、配偶者に配偶者居住権を取得させることができるようになります。
今回のAさんのように、配偶者が自宅不動産を取得することに相続人全員の合意が得られればいいのですが、預貯金を含めた金額面での合意が難しい場合に、配偶者居住権という権利で評価し遺産分割を行うという選択肢が増えることとなります。この配偶者の居住の権利については、令和2年4月1日以降に発生した相続から新たに認められています。
事例 86異母兄弟との遺産分割協議

Bさん
父が亡くなりました。相続人は自分と母親ですが、父は再婚で、前妻との間にも子供がいるようです。
どこに住んでいるかもわかりませんし、できれば連絡も取りたくありません。財産を渡すなんて以ての外です。
相続手続には、必ず相続人全員の協力が必要となります。
お父様が亡くなられたとのことで、息子であるBさんがご相談にいらっしゃいました。父XさんはBさんの母親であるAさんとは再婚で、前妻との間にも子供がいるらしいとのことでしたが、定かではなく、どこに住んでいるかも分かりません。
そんな状況で、相続手続をどのように始めればいいか教えてほしい、ということでした。
もし、前妻との間に子供がいれば、その人もXさんの相続人ということになります。相続手続には、相続人全員の協力が必要となる旨を説明し、戸籍と附票を取寄せ、相続人の確定を行いました。結果、前妻との間には、Bさんのお兄さんにあたるCさんという一人息子が、北海道にいることが判明しました。
次に、どのように連絡をとるべきか検討しました。Cさんとは全く面識のないBさんとAさんは、前妻とその子供に対して悪いイメージしか抱けないご様子で、出来れば自分たちは直接連絡を取りたくないとおっしゃいます。
しかし、遺産分割協議は、相続人間で話し合う必要があることをご理解いただき、まずは、Bさんから附票の住所にお手紙を出していただくことになりました。
後日、Cさんからお返事があり、遺産分割協議を重ねた結果、自宅の不動産などの遺産をBさんとAさんが取得することにCさんが同意されたため、遺産分割協議書を作成。
やり取りを重ねていく中で、Bさんには、自分の兄弟に会っておきたいという気持ちが強くなっていきました。そこで、直接Cさんに会って、遺産分割協議書へ署名・捺印、印鑑証明書の受け取ろうと、北海道へ出向くことにしたのです。
北海道から帰ってきたBさんは、大変すっきりした表情でいらっしゃいました。
Cさんは、父は自分が幼少時に亡くなったと聞かされていたらしく、生きていたことに驚き、わざわざ海を超えてBさんが北海道まで来てくれたことに恐縮し、道内の観光案内や、帰り際にお土産と往復の旅費まで渡してくれたそうです。
Bさんは、「父にそっくりだったCさんの横顔が忘れられない、本当に会いに行ってよかった」と何度も話してくださいました。
北海道に行く前、Bさんは「現在の遺産は離婚後に形成した財産。本当はびた一文も渡したくない」と話されていましたが、最終的には、直接会ったことでわだかまりがなくなったようでした。
会ったことのない相続人の間で協議をしなければならないケースは少なくありません。
相手の状況が全く分からない場合、どのような手段で連絡を取り合うのがよいか、大変難しいところです。実際にお会いいただくのが一番の近道かもしれません。
◆参考◆
●遺産分割の法定相続分
被相続人の子は第一順位として相続人となります。子には実子、養子、嫡出子、非嫡出子とありますが、いずれも子として相続人であり、法定相続分も同じです。前妻の子は後妻の子と法定相続分に差異はありません。相続財産が離婚後に形成されたものであったとしても、前妻の子の同意なくては、遺産分割をすることはできません。
このように、遺産分割には相続人全員の合意が必要となりますが、合意さえあれば法定相続分にとらわれず、持分を自由に決めることができます。全員が合意すれば、一人の相続人に全財産を取得し、残りの相続人は何も取得しないということも可能となります。
●疎遠な相続人がいる場合
行き来のない相続人がいる場合、戸籍の附票を取ることで住所は確認できますので、まずはその住所宛に手紙を出して連絡をとります。電話番号やメールアドレスは分からない為、返信が来るまで何度も手紙を出してみたり、実際に訪問してみたりと根気強く対応していくことが必要となる場合も生じます。
手紙を出しても宛先不明で戻ってくる場合等でも、所在不明として、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てて、相続手続を進めることは可能です。