事例 99自筆証書遺言を書いてもらいました

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Aさん

夫の自筆証書遺言があるのですが、震える手でなんとか書いた、ようやく読めるような状態のものです。相続手続に使うことはできますか?

自筆証書遺言は検認手続きが必須

Aさんから、ご主人のXさんが亡くなったと、ご相談をいただきました。
Aさんご夫婦には、お子様はいらっしゃいません。被相続人に子や孫がいない場合、相続人は直系尊属(父や母)となりますが、父や母、祖父母が既に亡くなっていらっしゃれば、相続人は兄弟姉妹になります。
さらに、兄弟姉妹で既に亡くなっている方があれば、その子(甥姪)が相続人となります。Xさんのご兄弟姉妹はほとんど亡くなっていらっしゃるので、相続人は甥姪含めて16人です。すなわち、相続手続に当たっては、この全員で遺産分割をしなければなりません。Xさんの相続財産はご自宅不動産と預金です。

「これがあるのですが…」Aさんはファイルから紙を何枚か出されました。

自筆証書遺言の注意点①

見ると、震えた字で「ゆいごんしょ」と書いてあります。
Xさんは認知症等を患ってはいませんでした。ところが、手が震えて、字がまともに書けない状態でした。そこで、練習を重ねて書き、何とか読むことができる遺言書が何枚かありました。
X さんの遺言書は「わたしのざいさんをAさんにゆずる」という内容のものでした。
ただ、そのうちのほどんどが形式不備でありました。自筆証書遺言は、日付や署名、押印が必須となるのです。そのうえ、自筆で書かれた遺言書は検認手続きを経ないと相続手続に使うことができません。しかも、検認には相続人確定の為の戸籍を取得する必要があるのです。

自筆証書遺言の注意点②

幸い、日付も署名も押印もすべて揃っているものが1枚ありました。
早速、相続人全員の戸籍を取得して、家庭裁判所での検認手続きに入りました。今回は相続人が多く、戸籍取得に時間はかかりましたが、無事に検認に入ることができました。
しかし、検認が終わり、いざ手続きに入ろうとする段階になって、もう一つ必要な手続きがあると判明。
司法書士によると、「ゆずる」という文言だと「遺贈」と解されるとのこと。そのため、登記を行うには相続人全員の関与が必要だというのです。この場合、遺言執行者の選任を裁判所に申し立て、選任されれば、執行者により手続ができます。

そこで、最終的にはAさんを遺言執行者として申立を行いました。ここでも時間を費やすこととなり、結局、相続手続完了までに約半年かかってしまいました。
それでも、Aさんは次の様に仰ってくださいました。

「時間はかかったものの、遺言書がなかったらもっと大変だったでしょう。手続きすらできなかったかもしれない。わたしは今後も家に住み続けられるから、何とか書いてもらってよかった。」

◆参考◆

平成31年1月13日自筆証書遺言の方式が緩和されました!!

●緩和前の制度では…

これまで、自筆証書遺言を作成する場合には、全文を自書する必要がありました。遺言書部分はもちろんのこと、添付する財産目録についても、パソコンでの作成や、通帳のコピーの添付は認められていませんでした。ただでさえ全文の自書は大変ですし、特に、お年寄りや財産の多い方にとっては、相当な負担となっていました。


●緩和後の制度のメリット

今回の見直しで、以下の様に方式が緩和された為、作成時の負担が軽減されることとなりました。
「自筆証書遺言に、パソコンで作成した目録を添付したり、銀行通帳のコピーや不動産登記事項証明書等を目録として添付したりして、遺言を作成することができるようにする」
さらに、財産目録には署名押印をしなければならないので、自筆でない添付物でも偽造も防止できるようになります。

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