事例 108特別の寄与の制度で兄嫁に相続財産を渡したい。

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Bさん

兄亡きあと、義父である父を献身的に介護してくれた兄の奥さんに、相続財産を受け取ってもらう方法はありますか?

特別の寄与分制度を検討してみましょう。

Bさんのお兄さんYさんは、奥さんのAさんと2人家族でした。
ご兄弟のお母さんは既に亡くなられ、お父さんのXさんはご実家で一人住まい。
ところが、ある日、転倒での骨折から介護が必要に…。そこで、XさんAさん夫婦が呼び寄せられ、同居が始まったのです。
フルタイムの仕事をしながら、愚痴も言わずに、家事に介護に忙しい毎日を過ごしていたAさん。
そんな矢先、ご主人のYさんが突然の交通事故で亡くなってしまいました。
当時のBさんは、忙しさにかまけ、実家に全く顔を出さず、父親と同居するつもりもなかったと言います。
そのため、Aさんは、仕事をしながら義父の介護を続けることになってしまいました。

兄嫁の寄与に対しての想い

Aさんは、仕事をしながら家計を支え、義父の介護もこれまで通りこなしました。
実の娘ではないのに、亡き息子のお嫁さんとして頑張ってくれるAさんに、Xさんは大変感謝していました。
そして、次第にBさんにもその気持ちは大きくなっていきました。
しかし、このままでは万が一の時、相続人ではないお嫁さん(Aさん)に財産を残すことができないのでは、と考えました。

特別の寄与の制度の創設

これまで、相続人以外の者の貢献を考慮するための方策はありませんでした。
しかし、それでは、Aさんのように義父の介護に尽くしても、相続財産を取得することができません。
そこで、2019年7月1日に「特別の寄与の制度」が創設されました。
これにより、例え遺言書で贈与の旨の記載が無くても、相続人に対して金銭の請求が可能となったのです。

特別の寄与の制度も検討したうえで、XさんとBさんは話し合いました。
その結果、Xさんの遺産の半分をAさんに残すことを決め、遺言書を作成しました。
もちろん事前にAさんにも伝えました。
それから数か月後Xさんは亡くなりました。
Aさんは遺言どおりに遺産の半分の遺贈を受けることとなりました。
今回のケースでは、事前に唯一の相続人であるBさんを含めて話し合いができ、
準備期間を設けたうえで、遺言書を作成したことでスムーズに手続きができました。
前述の通り、法改正により、相続人ではない人が介護をしていたとき、
相続財産の一部を相続人に請求できる制度が新設されましたが、
確実に相続財産を渡したいときは、Xさんのように生前に遺言書を作成することをお勧めします。

特別の寄与の制度の創設に関する事例

◆参考◆

特別の寄与の制度の創設

●これまでの寄与分制度

相続人が複数の場合、その共同相続人の中で、被相続人の事業に関する労務の提供、
財産上の給付、療養看護その他の方法により、被相続人の財産の減少を防いだり増加させたりした
相続人がいるときは、共同相続人間の公平を図る為、
その者に遺産の中から貢献した額を取得させる「寄与分」という制度があり、
従来の旧民法においては、寄与分を主張することができるのは相続人に限られていました。

●民法改正による特別の寄与分制度

民法改正により、相続人以外の者でも、被相続人の「親族」であれば、
貢献に応じた額を請求することができることになりました。
この場合の「親族」とは六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族をさし、
「内縁の妻」や「同居人」、「親切なお隣さん」などからの請求は認められません。
この「特別の寄与」を主張する者は相続人ではないため、遺産分割協議に参加するのではなく、
相続人に対して金銭(特別寄与料)を請求することになります。
今回の事案で、Xさんの長男の妻であるAさんは、相続人とはなりませんが、一親等の姻族として親族となります。
そのため、遺言がなかった場合でも、現民法においては「特別の寄与」として、
貢献に応じた額を請求することが可能でした。
また、特別寄与料は、当事者間の協議により決められますが、
協議が調わない場合は家庭裁判所に対して処分を請求することができます。
ちなみに、療養看護に貢献した場合の評価は、一般的には、
第三者が同様の療養看護を行った場合の日当額に療養看護日数を乗じたものに、
一定の裁量割合を乗じて算定されているようです。

参考サイト:法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の概要」(外部サイト)
※該当項目は【6相続人以外の者の貢献を考慮するための方策】

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