事例 105相続人以外へ財産を贈与できますか?

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Aさん

叔父の相続財産を、相続人以外の方に受け取ってほしいのです。どうしたらいいでしょうか?

民法改正により、相続人以外の親族へ遺産分配ができるようになりました。

「相続人以外の方に、相続財産を受け取ってもらえますか?」

Aさんが叔父の相続手続きの相談でいらっしゃいました。
叔父のXさんは生涯独身で5人兄弟の末っ子でした。また、既にご兄弟も全員お亡くなりになっているそうです。
そのため、相続人はAさんを含む甥姪7人とのことでした。
そして、Aさんが代表として動くことになったため、相談に見えたということでした。その理由は、一番お若いことと法定相続分が最も多いことだそうです。

お話をするうちに、Aさんが冒頭の質問をされました。
なんでも、相続人以外に、ぜひ財産を受け取ってほしい方がいるそうで…。

①Xさんのごきょうだい

先述の通り、叔父Xさんのごきょうだいは既に他界していますが、少々複雑だったようです。
まず、いわゆる異母兄弟が3人(長女Pさん、長男Qさん、次男Yさん)。そして、両親が同じZさん(Aさんのお母様)でした。ただ、母親が違うとはいえ、長女Pさんは弟Xさんを可愛がっていたそうです。
それは、Pさんの嫁ぎ先の北海道にXさんも居を移したことからも明らかでした。そして、Pさん亡き後も、その長男Rさん家族がXさんの面倒をみていたというのです。

②真の貢献者Bさん

Aさんがお葬式のために北海道に行くと、Rさんは10年前既に他界していました。
さらに、奥さんのBさんはご主人が亡き後、義理の母であるPさんを看取ったそうです。
その後、夫の叔父にあたる独居老人であったXさんのお世話を、子供たちと一緒にしてくれていたそうです。
それほど尽くしてくれたにもかかわらず、相続財産を受け取ることはできません。BさんもRさんのお子様もXさんの相続人とはならないからです。それは、RさんがXさんより先に死亡したためです。Aさんはそのときに初めて、兄弟姉妹の代襲相続は甥姪一代限り、と知りました。

「なんとしてもBさんご家族に相続財産を受け取ってほしい。真の貢献者は彼女です。財産を受け取る権利があります!」

そう思ったAさんは、東奔西走の末、当センターに辿り着いたということでした。

まず、Aさんは税理士に、Bさんに贈与税の負担のかからない方法を確認しました。そして、Xさんの相続人(Aさんの従兄弟たち)一人一人に掛け合いました。最後に、Cさんに一役買っていただくことで分割協議がまとまりました。相続人がそれぞれ相続分から出し合い、Cさんの相続分に500万円上乗せするという内容です。
その後、Cさんから1年に100万円ずつ、計5年間、Bさんに贈与してもらうことになりました。
亡Rさんの妹Cさんは、北海道にお住まいでBさんと親交がある方だったのです。

相続人以外の貢献者は法定相続人の配偶者とその子供達

◆参考◆

●相続人以外の貢献者

「なによりその努力を皆さんが認めてくださったことが嬉しい」
何の見返りも期待せず介護をしていたBさん親子も、大変喜ばれました。
故人のお世話をしてくれていた人にこそ遺産を渡したいというAさんの優しい熱意。それが、他の相続人の心を動かした事案でした。

●「特別寄与料」の請求

民法改正により、相続人の親族(相続人以外の者)の貢献を考慮するための方策の条文が追加されました。
(2019年7月1日施行)
これまで、多大な貢献をした場合でも、相続人以外の者は遺産の分配を受けられませんでした。
それでは実質的公平に反するため、今般の民法相続法の改正がなされました。
相続人以外の者であっても、一定の貢献をした場合には相続人に対して「特別寄与料」を請求できることとなりました。(ただし相続人の親族に限る)

参考サイト:法務省(相続法の改正)

●今回のケース

今回は贈与の形で、本来は遺産を受け取ることのできないBさんへの優しさが実ったケースでした。
今後は、この法律改正が施行されたため、次のような場合の請求が可能となります。

 例)長男の死亡後、その妻が義父の介護をしており、その義父が亡くなった場合。

こうした場合に、長男の兄弟姉妹に対して、妻が直接金銭の請求をすることができるようになりました。
(相続人以外の被相続人の親族が無償で療養介護等を行っていた場合に限る)

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