事例 128相続する土地が思いもよらない場所に…

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Aさん

父から相続するのは自宅不動産と周辺道路だけのはずですが、原野商法による地方土地の存在の可能性を聞き、心配になっています。

お父様のXさんのご相続の相談でみえたAさん。
先祖代々東京の下町で暮らしてきたため、
それならば、相続する土地は自宅不動産とその周辺道路だけのはず、と、
まず、Aさんはご自分で相続手続きをしようと試みたそうです。
ところが、都内のご自宅不動産の評価が高く、
それゆえ、税務申告や不動産の名義変更が必要な可能性もでてきたようで、
とても手に負えないと、当センターにいらしたとのこと。
ちなみに、相続人は奥様のBさんとAさんを含む3名のお子様、計4名です。

実際に、最初のご面談で持参された財産一覧には、
不動産についてはご自宅とその周辺道路(私道)の土地だけということで、
また、固定資産税の通知書も、都税事務所発行の通知書のみでした。

    

実は、最初の面談でAさんにお伝えしたことがありました。
それは、地方に土地を所有している可能性についてです。
というのも、いわゆる原野商法によって地方の土地を所有している方が、
Xさんと同世代の方に散見されるからでした。

   

すると、当初は可能性を否定していたAさんから、
「北海道と沖縄県の土地の権利証が倉庫の中から見つかった」と連絡がありました。
もし、相続する土地が遠方にあったら…と気になったAさんは、
もう一度、お母様と不動産の書類を家中探されたようでした。
相続人及び相続財産の調査を行い、着々と財産の総額が確定しつつあるタイミングでした。

    

はたして、当該の土地について登記簿謄本を取得して確認をしたところ、
結果として、いずれの土地も間違いなくXさん名義のものと判明しました。
さらに、地目は原野で固定資産税評価額が低く、固定資産税がかからないため、
通知が送付されず、全く気づかれなかったことが推測されました。

相続する土地が、まさか、北海道や沖縄県の土地があると思ってもみなかったAさん。
ともあれ、評価価値及び将来の有用性の低さを鑑み、できれば手放したいとのご希望を持たれました。
しかし、売却や贈与をするには、相続人に名義を変更そしなくてはけませんので、
まず、他の財産と共に遺産分割協議を行い、地方の土地はいったんAさん名義に変更することになりました。
それにより、土地の処分についてはもう少し時間がかかりますが、相続税の申告には何とか間に合いました。

   

相続する土地が思いもよらない地方に存在して驚く相続人

   

◆参考◆

   

不動産を所有している場合にかかる税金に「固定資産税」があります。
1月1日現在の土地・家屋及び償却資産の所有者に対し、
その固定資産の価格をもとに算定される税額を所在する市町村が課税する税金です。
そして、地価の変動に応じた適正な価格に合わせる為、3年に1度の基準年度に見直しが行われています。

  

本来は毎年、不動産所有者にこの固定資産税の納税通知書が送付されますが、
今回のケースのように、不動産の価格が低いと通知書が送付されない場合があります。
それは、同一の市町村内で同一の者が所有している土地の合計額又は家屋の合計額が、
土地については30万円、家屋については20万円に満たない場合、固定資産税が課税されないためです。
そのため、今回のケースのように、山林や原野に土地を所有していたとしても固定資産税が課税されずに、
通知書が届かず、所有の事実を気付くことができない場合があるのです。

  

  

事例 124自宅の名義が変更されていない不動産

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Aさん

親の住んでいた自宅が、親の名義ではありませんでした。相続の手続きはどうしたらいいですか?

自宅の名義を確認したことはありますか?

自宅の名義は当たり前に親の名義になっている、と、信じて疑わなかったAさん。
お父様のXさんの相続についてご相談を受けました。
まず、ご相続人を確認します。
お母様は5年前に他界され、ごきょうだいはいないということで、相続人はAさんおひとり…
したがって、本来ならスムーズに相続手続が進むはずでした。

見落としがちな名義人

ところが、Xさんのご自宅の不動産の調査を行ったところ、
結果的に、不動産はXさん名義ではなく、お母様のお姉様のZさん名義、
つまり、Aさんにとっては母方の伯母名義であることがわかりました。
いずれにせよ、Zさんは2年前にお亡くなりになっているとのことでした。

自宅の名義人を確認

また、Zさんは独身で子供もいなかったことから、その相続についても、
養子縁組等が無い場合には、Aさんが相続人になる可能性がある旨を説明し、
その上で、Zさんの相続調査も開始しました。
そして、戸籍を取り寄せた結果、Zさんの相続人はAさんをはじめ、
Aさんの従兄妹のBさんとCさんであることが分かりました。
さらに、遺言書はなく、不動産の他にZさん名義の預貯金などが数件あることがわかりました。
第一に、Zさんの相続について、Aさん、Bさん、Cさんの相続人全員で話し合いを行い、
全相続財産をAさんが取得し、他の相続人へは代償分割を行うこととなりました。

なお、お父様の相続についてはすぐにお手続きが完了したのですが、
結果として、Zさんの相続を含めて全ての手続が終わるまでに半年を要しました。
「相続手続はその都度行わないと後々大変なことになるのですね!」
Aさんは、実感を込めておっしゃっていました。
とはいっても、Zさんの場合はお亡くなりになられてからそれほど年月も経っておらず、
それゆえ、預貯金等をすぐに見つけることができ、無事に相続手続を完了することができました。
しかしながら、時間が経過をすればするほど財産を探すことも困難になり、新たな相続が発生することで、
どんどん相続人が増え、手続を完遂できなくなるということも生じます。
相続手続は放置をせずに、その都度行うことを強くお勧めいたします。

  

自宅の名義が思っていた親の名義ではなかったため、途方に暮れる男性のイラスト

  

◆参考◆

●相続手続での名義変更の注意

相続には、相続税の申告納税をはじめとした、期限が定められている手続きもありますが、
一方で、遺産分割協議や不動産や株式等の名義変更、
預金口座の解約などの期限が定められていない手続きもあります。
特に不動産については、名義変更せず既に亡くなっている父又は祖父名義のままで、
固定資産税を納税しながら住み続けているご遺族の方をお見受けすることがあります。
実際には、そうして住み続けていくことはできますが、
相続の手続きをその都度行わず放置しておくと、
いざ名義変更や解約手続きを進める際にスムーズに行かなくなる恐れがあります。

●相続登記の義務化

また、不動産の相続登記がなされていないことが主な原因と言われている
「所有者不明土地」の問題を解決するための制度が、2024年4月から開始となりました。
それには、不動産を相続した場合や、所有者の住所を変更した際の登記申請を期間を設けて義務化し、
遺産分割協議の期間も設定されます。
加えて、相続した土地で、管理が厳しくなった土地を国庫に返納できる制度も新設されます。

  

【相続登記の義務化については、東京法務局の関連ページもご参照ください】

  

   

事例 112義父名義の土地を取得することはできるのか。

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Aさん

義父名義の土地を自分の名義にすることはできるでしょうか?

配偶者名義と思い込んでいた土地が、そうではなかったという例は少なくありません。

「義父名義の土地があるんです。主人の土地だと思っていたのに・・・」
3年前にご主人のXさんを亡くされたAさんのご相談です。
おふたりの間に子供はおらず、Xさんのご両親はご健在。
そのため、相続人は配偶者のAさん、義父、義母の3名でした。
Xさんの死後すぐに、預貯金の名義変更や生命保険金の請求は済ませていました。
ところが、Xさん所有の不動産の名義変更を失念していたそうです。

誰名義の土地かを要確認

というのも、現在Aさんが住む自宅は、土地建物はご主人の所有、
隣接する貸家の土地建物は義父Bさんの所有、と聞いていたからとのこと。
そこで、登記簿を確認することになりました。
すると、それらの土地は、一筆で義父Bさんの名義となっていたのです。
Aさんはこの事実に驚き「自宅の土地はどうなるのか」と心配そうでした。

義父名義の土地をどうすればいいのか

自宅の土地について、今後のことを考えたいAさん。
義父名義の土地なので、Bさんが亡くなれば、
その相続人は義母と義兄(Xさんの兄)となり、Aさんに土地の相続権はありません。
つまり、貸家の土地と一体となったままでは、
義母か義兄が相続した土地上に、Aさん所有の自宅がある状態になってしまいます。
それでは、今後、ご主人の親族に負担をかけずにするにはどうしたらいいのか?
親族も含めて、専門家と相談を重ね、3つの手続きをすることとなりました。

①Xさんの相続については、Aさん・義父B・義母の遺産分割協議により、
 Xさん所有の自宅建物はAさんが相続するよう相続登記を行う。
②義父名義の土地のうち、自宅部分と貸家部分が別々の土地になるよう、
 土地の分筆登記を行う。
③Bさんが「Aさん所有の自宅の土地はAさんへ遺贈する」、
 「貸家の土地と建物は長男(義兄)へ相続させる」という内容で、公正証書遺言を作成する。

それにより、Bさんが亡くなった際は公正証書遺言を用いて、
Aさんが自宅の土地を、義兄が貸家を、それぞれ取得することができるようになります。
こうして、一連の手続きが済み、Bさんからも感謝のお言葉をいただきました。
「今回の手続きで、自分自身の相続についても備えができ、心が軽くなりましたよ」

義父名義の土地を今後に備えて分けられるように最善を尽くした。

◆参考◆

亡くなった配偶者の親族との相続手続

●子供のいないご夫婦は遺言書を

まず、お子様がいないご夫婦は、公正証書で遺言書を遺されることをお勧めします。
なぜなら、ご主人が亡くなった場合、ご主人のご両親がお一人でもご存命なら、
配偶者とその方が相続人となり、遺言書がない場合、
相続人間での遺産分割協議が必要となります。
そのことから、義父や義母が高齢で遺産分割協議ができなかったり、
ご両親やその祖父母(直系尊属)が既に亡くなっていると、
さらに、ご主人の兄弟姉妹(先に死亡している場合は甥姪)との協議が必要となったりします。
こうして、ご苦労されるケースが多くみられるため、遺言作成での対策をおすすめします。

先々を考えて、配偶者やその子どもが疎遠な親族とのやり取りに困らないためには、遺言作成の対策が最適。

●先々を考えた取り組み

親が先に亡くなれば、親の土地を子が相続するため問題は生じにくいですが、
今回のように先に子が亡くなってしまうと、より複雑なことになってきます。
そうすると、Aさんのように、ご主人のご両親にとっては法定相続人とならず、
他の親族に対しても弱い立場となる方も少なくありません。
だとすると、できればXさんがご存命のうちに、Bさんから生前贈与を受けておく、
または、Xさんに相続させる旨の遺言書を書いてもらう、
すなわち、予備的遺言として、XさんがBさんよりも先に亡くなった場合は
Aさんに遺贈するという内容を盛り込む、等の取り組みがあれば良かったのかもしれません。

お困りの際は、いつでも当センターにご相談ください。

事例 93遺言書はあるものの・・・

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Yさん

父が亡くなりました。
相続財産である4階建ての不動産の登記について悩んでいます。
遺言書があるのですが、必ずその通りにしなくてはいけませんか?

故人の遺志を尊重し、遺産の分配は指定通りに行われることが原則ですが、もちろん例外も認められます。

お父様がお亡くなりになったというYさんからご相談をいただきました。
お母様は既に他界され、相続人はYさんと妹Bさんのお二人です。

主な相続財産は駅近くの4階建ての建物で、4階にお父様がお住まいでした。1階は料理店、2階はスナック、3階は賃貸用の住居で空き家になっています。Yさんは、ここ数年介護が必要であったお父様と一緒に暮らし、賃貸の家主としての対応も行っていました。 建物は、4階部分と1~3階部分の二つの専有部分として登記されています。
すなわち1~3階で一つの家屋として登記されているのです。預貯金は賃貸の際に預かっている保証金が大半を占め、多くは残されていませんでした。

主な財産が一棟の不動産しかなく、これをどう分けるか、相続人間で頭を悩ますところですが、Yさんによると、お父様がまだ介護がそれほど必要ではなかった頃、公証役場で遺言書を作成していたかもしれないというのです。

さっそく公証役場で遺言書の検索を行ったところ、10年程前に書かれた遺言書が保管されていました。
そこには、「建物の1階と4階をYさんに、2階と3階をBさんに、土地と預貯金はそれぞれ2分の1ずつ相続させる」とあり、遺言執行者としてYさんが指定されていました。また、付言事項として、「平等に相続させたい、兄妹仲良く末永く暮らしていくことを願う」 とありました。
YさんはBさんにその内容を伝えました。

お父様としては、各階の賃料も考えて平等になるよう、1・4階、2・3階で組み合わせたようです。しかしながら、専業主婦のBさんは離れて暮らしており、今後スナックの家主としての対応や税務申告をしていくことは、かなり負担になりそうです。また、この遺言の内容で登記するとなると、一つの家屋として登記されている1~3階を区分登記しなければならなくなり、費用も手間もかかります。
結局、YさんとBさんで話し合い、この遺言書どおりではなく、協議で遺産分割することとなりました。永らく介護してきて平等とすることに少なからず不満があったYさんも、お父様の遺志はできるだけ尊重したいと、平等になるよう協議されました。

最終的には不動産全部をYさんが取得し、その約半分相当額をBさんへ代償金として支払う形で合意されました。

◆参考◆

遺言書を書くことにより、故人の遺志を反映した相続がなされますが、実現可能性や受遺者の意向等を踏まえないと、結局、相続人に委ねる形となり、遺志が反映されない可能性もあるので注意が必要です。

●遺言の原則
遺言は亡くなった方の最後の意思表示ですから、その遺志を尊重し、遺産の分配は指定通りに行われることが原則です。しかしながら、今回のケースのように、相続人が話し合い、全員がその変更に合意すれば、遺言者の指定とは異なる相続分や遺産分割を行うことができます。遺言通りに実現してほしい場合には、遺言者は遺言執行者を遺言書で指定しておくことがのぞまれます。

●遺言の例外
ただ、遺言執行者が指定されていた場合でも、相続人全員の合意があれば、遺言執行者もその合意を追認する場合があります。特定の相続人に多くの遺産を与えたい場合、相続人間の力関係等により、意思に反した合意がなされる可能性もあるでしょうから、確実にそのようにしたい場合には、生前贈与等も検討すると良いでしょう。

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