事例 93遺言書はあるものの・・・

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Yさん

父が亡くなりました。
相続財産である4階建ての不動産の登記について悩んでいます。
遺言書があるのですが、必ずその通りにしなくてはいけませんか?

故人の遺志を尊重し、遺産の分配は指定通りに行われることが原則ですが、もちろん例外も認められます。

お父様がお亡くなりになったというYさんからご相談をいただきました。
お母様は既に他界され、相続人はYさんと妹Bさんのお二人です。

主な相続財産は駅近くの4階建ての建物で、4階にお父様がお住まいでした。1階は料理店、2階はスナック、3階は賃貸用の住居で空き家になっています。Yさんは、ここ数年介護が必要であったお父様と一緒に暮らし、賃貸の家主としての対応も行っていました。 建物は、4階部分と1~3階部分の二つの専有部分として登記されています。
すなわち1~3階で一つの家屋として登記されているのです。預貯金は賃貸の際に預かっている保証金が大半を占め、多くは残されていませんでした。

主な財産が一棟の不動産しかなく、これをどう分けるか、相続人間で頭を悩ますところですが、Yさんによると、お父様がまだ介護がそれほど必要ではなかった頃、公証役場で遺言書を作成していたかもしれないというのです。

さっそく公証役場で遺言書の検索を行ったところ、10年程前に書かれた遺言書が保管されていました。
そこには、「建物の1階と4階をYさんに、2階と3階をBさんに、土地と預貯金はそれぞれ2分の1ずつ相続させる」とあり、遺言執行者としてYさんが指定されていました。また、付言事項として、「平等に相続させたい、兄妹仲良く末永く暮らしていくことを願う」 とありました。
YさんはBさんにその内容を伝えました。

お父様としては、各階の賃料も考えて平等になるよう、1・4階、2・3階で組み合わせたようです。しかしながら、専業主婦のBさんは離れて暮らしており、今後スナックの家主としての対応や税務申告をしていくことは、かなり負担になりそうです。また、この遺言の内容で登記するとなると、一つの家屋として登記されている1~3階を区分登記しなければならなくなり、費用も手間もかかります。
結局、YさんとBさんで話し合い、この遺言書どおりではなく、協議で遺産分割することとなりました。永らく介護してきて平等とすることに少なからず不満があったYさんも、お父様の遺志はできるだけ尊重したいと、平等になるよう協議されました。

最終的には不動産全部をYさんが取得し、その約半分相当額をBさんへ代償金として支払う形で合意されました。

◆参考◆

遺言書を書くことにより、故人の遺志を反映した相続がなされますが、実現可能性や受遺者の意向等を踏まえないと、結局、相続人に委ねる形となり、遺志が反映されない可能性もあるので注意が必要です。

●遺言の原則
遺言は亡くなった方の最後の意思表示ですから、その遺志を尊重し、遺産の分配は指定通りに行われることが原則です。しかしながら、今回のケースのように、相続人が話し合い、全員がその変更に合意すれば、遺言者の指定とは異なる相続分や遺産分割を行うことができます。遺言通りに実現してほしい場合には、遺言者は遺言執行者を遺言書で指定しておくことがのぞまれます。

●遺言の例外
ただ、遺言執行者が指定されていた場合でも、相続人全員の合意があれば、遺言執行者もその合意を追認する場合があります。特定の相続人に多くの遺産を与えたい場合、相続人間の力関係等により、意思に反した合意がなされる可能性もあるでしょうから、確実にそのようにしたい場合には、生前贈与等も検討すると良いでしょう。

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