ご相談者Aさんはご主人がお亡くなりになり相談に見えました。相続人は配偶者であるAさんと、それぞれ別居しているお子さんがお二人です。
生前ご主人が財産に関するすべてのことを一人で行っていたため、Aさんは一緒に暮らしていたものの、どこにどのような取引があったのか全く分かりませんでした。お子さん達も別居しており、同様に財産のことは全く分かりません。それでも、Aさんが家中探し回り、通帳や不動産に関係する書類をまとめてある箱を何とか見つけ出すことができたのです。「きっとこれがすべての財産だろうし、相続手続も何とか自分でできるだろう」とAさんは一安心しました。
そんな矢先、Aさんの元に上場会社の○○株式会社から株主総会に関する通知が届きました。手元の箱には株式に関する資料は一切なく、初めて見る通知を眺めながら「株券は家のどこかにあるのだろうか?」「証券会社を使っているとしたらどこなのだろうか?」「そもそもどこに何を確認したらよいのだろうか?」と、急に不安になってしまい相談にお見えなった、とのことでした。
Aさんのお話を伺い、まずは通知の封筒に書いてあった「株主名簿管理人連絡先」の信託銀行に電話をして株券の状況を確認しました。その結果、株券自体が家にあるわけでなく証券会社で管理していることが分かりました。ただし、どこの証券会社かまでは分かりません。
次にすべきことは、証券会社の特定です。通常、証券会社で口座を開設している場合は取引残高報告書制度によって、残高があれば最低でも年1回は取引残高報告書が送られてくるので、報告書から証券会社や株式の預り内容を特定することができます。その他にも郵便物から証券会社を特定することもできるのですが、「不安なまま郵便を待っているのもちょっと…」というAさん。
そこで別の方法として、口座を開設している証券会社を知るために、証券保管振替機構(通称:ほふり)へ「登録済加入者情報の開示請求」の手続をすることを検討しました。開示請求手続をすることで、「登録済加入者情報通知書」という書類から口座を開設している証券会社等の一覧を確認することができるのです。
もうどうにもならないのではないかと不安になっていたAさんは、そのような方法があれば何とか手続ができそうだという事が分かり、安心した様子でした。そこで、一定の期間は郵便物を待ち、郵便物や報告書が来なかった時には開示請求手続をしましょう、という事で了承されました。
その後Aさんのもとには取引のあった証券会社から取引残高報告書が郵送され、証券会社に問い合わせをして無事に相続手続をすることができました。
Aさんのように、普段の生活では接することの少ない相続手続を前にして、どうすれば良いか分からず不安に思われているお客様はたくさんいらっしゃいます。そのような時に、様々なノウハウや数多くの事例を通じて数多くの選択肢を提供できることにこそ、相続手続支援センターの強みがあるのだろうな、と強く実感します。
また、今回のケースのように一人で一家の財産の管理をされている方がいなくなった時にどのように財産を把握するのか、どのように手続きを進めてよいのかで残された御家族が困ってしまう事もよくある事です。家族に負担をかけまいとする生前の想いは、エンディングノートに書き記しておくことで自分がいなくなった後もしっかり受け継がれるよう、早めの準備をしておきたいものですね。