事例 103贈与のつもりはなかったのですが…

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Aさん

父が亡くなる前に、同意のもとで解約した預金を母の口座に移していたようです。
本人たちは贈与のつもりはなかったようですが、こうした場合、税金はどうなるのでしょうか?

贈与かどうかに関係なく、お父様の相続財産として計上する必要があります。

お父様Xさんの相続について、Aさんからご相談がありました。
「相続のことは弟のBに全て任せていました。しかし、弟が転勤になり、後は頼むと言われてしまいました。」
さらにお伺いすると、お父様の財産のことはよくわからないとのこと。
「弟からは、自宅の名義変更が残っていると言われました。他には、少し預金もあるようです。」
同席しているお母様のYさんは、お話をAさんに任せて、隣でおとなしく座っています。

①Xさんの預金財産の行方は?

まず、Xさんの相続人は長女Aさん、長男Bさんと、Yさんの三人。
Yさんは専業主婦として一家を支えてきたということでした。
子供達は結婚して別居していますが、Bさんはよく実家に顔を出しているそうです。
Aさんのお話にあったように、相続財産は自宅不動産と銀行預金ということで、お持ちいただいた1冊の預金通帳を拝見しました。
現役時代に上場会社の役員だったXさん。生前も元気にご自宅に住まわれて、医療費等は少なかったとのことでした。
しかし、その割には、預金額が少ない印象を受けました。

②贈与や財産隠しのつもりがなくても…

念のために、Yさんに「生前に贈与を受けましたか?」と伺うと、「そんな人じゃないです」との答え。
そこで、訊き方を変えてみることにしました。
「大変失礼ながら、Yさんはご預金をいくらくらいお持ちですか?」
すると、どうでしょう。「K銀行やU銀行に数千万あります」というお返事でした。
驚いたAさんが詳しくお訊きになると、亡くなる数か月前に、Xさんの同意の上で預金を解約したというのです。
さらに、家の近くにある銀行、信用金庫等数行に分散して、Yさんの定期預金として入れたということでした。
その際、Bさんが同行し、各金融機関で手続きを行ったそうです。
もちろん、YさんもBさんも、財産を隠すつもりは全くありませんでした。
単に、相続手続が面倒そうだから先にお母様の口座に移しておこう、としただけだったそうです。

預金についてそうした経緯があり、BさんはAさんに「後は不動産の名義変更だけ」と伝えたのでしょう。
しかし、Yさんの口座に入った財産は、贈与かどうかに関係なくXさんの相続財産に計上する必要があります。
計上により、相続税申告が必要となりましたが、幸い、申告期限まではまだ余裕がありました。
そこで、当センターが税理士を紹介し、無事に申告を行いことができました。
親の相続手続を、子供が相続手続を代表して行うことは多くあります。
その場合は、ご家族皆様の話を聞かないと、手続漏れが生じる可能性があるので注意が必要です。

贈与したつもりの「みなし財産」に気を付けましょう。

◆参考◆

●名義預金(みなし財産)の注意点

被相続人の名義でない預金でも、被相続人の相続財産とみなされる場合があります。
いわゆる名義預金です。これは、贈与の手続きを経ずに、相続人名義の預貯金となっている場合です。
なお、問題となる多くは、子供名義での親の預金や、専業主婦の妻名義の預金など。
今回のケースとは逆の場合もあります。贈与のつもりでも、相続人に名義を変えるだけでは不十分…。
贈与したことにならず相続財産となる場合もあるのです。
そこで、贈与したと主張するために、その事実を明らかにしておくことが必要となります。
(例)贈与した財産(通帳や印鑑)は贈与された人が管理する
   贈与契約書を作成する、贈与税の申告をしておく、等


●相続税申告の注意点

相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。
今回、ご相談いただいたことにより、相続税申告が必要なことが判明しました。
ですが、そうでなければ、そのまま申告期限を迎え、税務署からの問い合わせに慌てていたかもしれません。

参考サイト:国税庁「相続税の申告と納税」

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