事例 131配偶者居住権をご存じですか?

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Xさん

少し前に、配偶者居住権という制度ができたらしいですね。興味があるので、教えてほしいのですが。

配偶者居住権について詳しく知りたいという、Xさんからのご相談でした。
Xさんは、以前にお母様の相続手続をお手伝いしたお客様です。
2020年に施工された制度ですので、資料を用意し、まずはお話を聴いてみることにしました。

再婚したXさんは、今の妻・Yさんとの間にお子さんはいないとのこと。
一方で、前妻との間には二人のお子さん(AさんとBさん)がいるそうです。
なんでも、二人の子供とYさんとの関係は最悪だそうで、顔を合わせて話すことすら全くできないという状況だとか。
Xさんは自分亡き後の家族のことを大変心配しておられ、
妻Yさんの生活を守っていくために、何か良い方法がないかと考えていたところ、
とある終活セミナーで「配偶者居住権」という制度を知ったとのことでした。

そんなXさんの想いは、次の通りです。
・Yさんが自分亡き後も自宅に住むことができ、生活に困らないようにしたい
・最終的に自宅の不動産は、長男のAさんに引き継いでもらいたい
・なにより、家族で揉めることがなく円満に相続が終わるように、自分の遺志をしっかりと遺したい

施行されて5年、遺された配偶者の居住権を保護するための「配偶者居住権」は、
初年こそ月の利用件数が一桁であったようですが、令和三年以降、年々利用件数が増えています。
おそらく、Xさんのような想いを持った人々の家族を助ける制度として
今後も、より世の中に普及していくことでしょう。

     

配偶者居住権によって、自分亡き後の相続手続を考える夫と、妻、ゆくゆくは自宅を相続する息子のイラスト。

Xさんが配偶者居住権を設定したいと強く希望するのも、Yさんを想ってのことでした。
それから、公証人と打ち合わせを何度も行い、Xさんのご納得がいく公正証書遺言を作成。
もちろん、Yさんと、お子様のAさんやBさんへの気持ちを込めた付言事項も忘れずに加えました。
そして、遺言を作成し終えたXさんの表情は、安堵されて清々しいものでした。

  

◆用語説明:配偶者居住権◆

まず、前提として、夫(妻)が死亡した場合に、残された妻(夫)は、
住み慣れた自宅での居住を続けることを希望するのが一般的だと思われます。
特に、高齢者である場合には、新たな環境で生活を立ちあげることは
経済的にも精神的にも容易なことではないと考えられ、
このような配偶者の居住する権利を保護すべく、民法の改正によりこの権利が創設されました。

すなわち、この制度を利用することで、
配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合、
遺産分割で配偶者居住権を取得することにより、
原則として終身の間、その建物に無償で居住することができるというものです。
なお、所有権自体は子に取得させ、配偶者は無償で居住できる権利を取得します。
さらに、遺言で配偶者に遺贈することもできます。
つまり、自宅建物を所有する者は、遺言により、配偶者に居住権を確保しつつ、
自宅の所有権については自分の子に取得させることが可能となります。

また、この制度を利用すると、所有権よりも低く財産評価されることになるため、
遺産分割では配偶者は多くの預貯金を相続できることになり、
遺言での遺留分侵害額請求に対しても対処できると考えられます。
これにより、老後の生活が困窮する事態は避けられそうです。
加えて、配偶者居住権は、Xさんのように妻と(前妻の)子との間で相続手続の難航が予想される場合に、
難問を一挙に解決する制度だといえそうです。

  

  

  

事例 114終活のための遺言書作成協議

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Aさん

終活で遺言書を作成しようと思います。何から始めればいいですか?

終活をはじめるタイミングは人それぞれ。まずはご相談ください。

「そろそろ終活を始めようと考えているんです。」

久しぶりにご連絡をくださったAさん。
数年前に、奥様の相続手続をお手伝いさせていただいた方です。
当時、お仕事がいそがしく、家のことは全て奥様に任せきりだったAさん。
定年退職をされた翌年、奥様は急な病で倒れ、わずか2週間の闘病の末に旅立たれてしまったのです。
突然に一家の司令塔を失い、大いに困ったAさんが
当センターにいらっしゃり、お手続きのサポートをしたのでした。
奥様の遺産はご実家から相続した不動産の他、預貯金、株式や投資信託等多岐にわたりました。
そのため、全ての手続きを終えるのに半年近くを要し、
そうした経験からか、Aさんは自らの終活に際し、自分の相続準備を手伝ってほしいと思ったそうです。

まずは現状を把握して、できることから始めましょう

そもそも終活とは、自分の人生の終わりについて考えて準備する活動のことです。
遺された家族の負担を軽減するための活動である前に、
自分の残りの人生を充実させるために行う前向きな活動でもあります。
そのため、何から始めるべきという順番はありません。
まずは、自分が気にかけていること、できそうなことから始めてみましょう。

終活における遺言書作成

Aさんは、相続が突然起きたときの残された家族の苦労を身に染みて経験しています。
そして、遺言書があることは、手続きがスムーズに進められる大きな利点です。
また、奥様の財産のお手続きに時間を要したこともあり、まずは財産を整理することにしました。
財産一覧の作成、相続財産の把握、おおよその納税額を試算・・・
その上で、家族にどう相続させるのがいいのかを検討されました。

「自分が亡き後、子どもたちが遺産相続で揉めて欲しくない」
それが、Aさんの切なる想いでした。
そこで、長男長女を実家に招集し、テーブルに財産一覧と試算表を広げ、
 「遺言書作成のための会議」をすることにしたのです。
議長はもちろんAさんです。まずは自身の思いを子供達に伝え、
次に、それぞれの言い分を聞き、時間をかけて、
全員が納得するように取り纏められたのです。
そして、その協議通りの遺言書を作成されました。
「せっかく遺言書を作っても、内容が相続人同士で納得ができるものでなかったら、しこりは残ると思う。
自分は全員の思いを酌んだ遺言書を作りたかった。今後も議長健在の限り、状況が変わればまた『協議』します」
さながら、それは「主役(被相続人)ありの遺産分割協議」のようでした。

◆参考◆

●遺言書作成時の注意

相続(争族)対策として有効といわれる「遺言」ですが、
「遺言書があれば万全」とも言い切れません。
むしろ、独り善がりの遺言ではトラブルの原因になりかねませんし、
内容によっては、遺志通りに実現されない恐れもあります。
今回のケースのように、作成のための会議を行えずとも、
可能であれば、財産を受ける方や遺言執行者として指定した方に、
事前に説明し了承を得ておくことが望まれます。

●自筆証書遺言保管制度

自筆証書遺言とは、自筆で書く遺言書のことです。
これまでは、手軽に作成できる反面、自宅で保管するため、
紛失したり、隠匿・破棄・改ざん等されたりする恐れがありましたが、
2020年7月からは、これを法務局で保管してくれる制度が始まります。
この新しい制度により、様々な懸念事項を未然に防ぐことが可能となりますが
あくまで保管が目的で、内容についての精査はされません。
そのため、遺言書を実現可能で不備のないものを作成するには
専門家のアドバイスに基づいた公正証書遺言(公証役場で作成する遺言書)を
検討されることが望ましいでしょう。

◆自筆証書遺言保管制度に関しては、法務省の専用ページをご参照ください◆

お困りの際は、いつでも当センターにご相談ください。
遺言作成など、生前対策のご相談も承ります。


終活は自分の人生を振り返り、これからの人生をより豊かにするための活動です。その後、遺言作成をお考えの際には、当センターで発売中の『遺言のススメ』をガイドとしてご活用ください。

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