事例 129相続放棄と認知の子供

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Aさん

亡くなった主人には住宅ローンの返済が残っているので、相続放棄を検討しています。

相続放棄とは、プラスもマイナスも含めたすべての財産を放棄することです。

今回、亡くなったご主人Xさんには、多額の住宅ローンが残っているため、
奥様のAさんは相続放棄を選択しようとのご相談でした。
一般的には、住宅ローンには団信がついています。
このため、債務者の死亡を申請すれば、住宅ローンはなくなるものです。

  

しかしながら、Aさんにはとある問題が生じていたのです。
それは、Xさんの存命中に住宅ローン返済が滞り、住宅が競売に掛けられていたということ。
しかも、競売金額では住宅ローンを完済できず、その後も残った返済が滞るなど、
遅延損害金が膨らんでいるという惨憺たる状態だったのです。
そのため、自宅も、購入者から借家として借りて住んでいる状況でした。
これでは、既に団信の機能は失われているため、死亡しても債務は消滅しません。
その他の金融資産も限りなくゼロに近かったため、相続放棄したいとのことでした。

  

ちなみに、最近になって成人したお子様が競売された自宅を買い戻していたため、
所有権はAさん側に戻っており、住まいの心配がなくなったこともあっての相続放棄となりました。
ところが、相続人を確定していく中で、今度はより厄介な事実が判明したのです。
それは、ご主人にAさん以外の女性との間に、認知された子供がいたということです。
さらに、認知された子供は、まだ7歳の小学生でした。
Aさん家族の相続放棄後、こんな小さな子に借金という財産が分与されるのは、悪夢でしかありません。
とはいえ、これまで存在も知らなかった認知の子供とその母親への連絡は、非常に躊躇われるものでした。

   

自分の相続放棄後、認知の子とはいえ、小さな子供に借金を背負わせることに悩む女性

だからといって、仮にAさんが知らせなくとも、債権者が通知を出す可能性は高いこと、
そうすれば、自ずとXさんとの関係や死亡の事実を知ることになること、
そして、そうなった時、適切に相続放棄の手続きができなければ、
7歳の子供に多額の借金が降りかかってしまうことに・・・。
Aさんは悩んだ末、認知された子供とその母親に宛ててお手紙を出すことにしました。

   

そのお手紙の中で、Xさんが死亡し、Xさんには債務があったため、Aさん家族は
相続放棄という選択をしたと伝えました。
その上で、認知の子供が相続放棄の手続きをしやすいように、
Aさん側でわかる情報をまとめた下書きと、必要な戸籍謄本も同封し、
放棄をした場合は必ずお手紙を下さいという文言を添えました。
複雑な感情に苛まれ苦しみながら、Aさんができる精いっぱいの対応をしたのでした。

   

◆用語解説:相続放棄/団体信用生命保険(団信)◆

被相続人の財産に属した『一切の権利義務を放棄するか(相続放棄)、
承継するか(単純承認・限定承認)を選択できる』 制度です。
被相続人の財産はプラスの財産(不動産や預貯金)だけでなく、
マイナスの財産(借金等の債務)も含まれるため、
後者がプラス財産よりも多い場合があり、承継した相続人に大きな負担となることも…。
また、例えマイナス財産が多くなくても、相続財産を 承継したくない相続人がいる可能性もあります。
そこで、民法では、相続人の利益保護や意思尊重の観点から、
相続人は一定の期間内に相続放棄することができるとしています。

  

住宅ローンの契約時に加入する保険で、
その住宅ローンの契約者が死亡、又は高度障害になった場合、
それ以降の支払が免除され、相続人はその債務を負うことなく、
住宅を相続することができるというものです。
遺族に対して保険金は支払われない代わりに、
死亡した時点で、保険会社が残債務に当たる額を住宅ローンの引受先である銀行等に支払い、
これにより債務は消滅するという仕組みです。

   

   

   

事例 116相続税を考えた対策

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Aさん

相続税の負担を考えると、自分が相続しない方がいい、と母が言っています。本当にそうでしょうか?

相続税の負担を減らすなら、自分は相続しない方がいいという主張。

相続税のことを気にしている相続人がいる、とご相談にいらっしゃったのは、
兄のXさんを亡くされて間もないAさんでした。
Xさんには配偶者も子もないため、必須の相続人と第一順位の相続人がいないことになります。
そして、お父様は既に亡くなっているとのことですが、お母様のYさんはご健在で、
さらに、96歳と高齢ながら意識も判断もしっかりしているとのことでした。
したがって、相続人は、第二順位のYさん一人ということになります。
さて、こうしたご説明も兼ねて、次男であるAさんと長女のBさんにもご同席いただきながら、
Yさんのお宅で初回面談を行い、お話しを伺うことになりました。

相続税の基礎控除

まずは、相続税を確定するために相続財産の把握が必要です。
Xさんはお父様から相続した自宅不動産にYさんとが同居していたので、
相続財産はこの不動産と金融資産、生命保険の死亡保険金でした。
また、Yさんの死亡時にXさんが受け取る予定の生命保険もありました。
まさか、先にXさんが亡くなるとは、誰も想定していなかったのです。
通常、相続人が一人の場合、相続税の基礎控除額は3,600万円で、
相続財産の全体がこの額を超えると相続税の申告が必要となります。

相続順位を繰り下げるには

今回、Xさんの相続財産は3,000万円で、基礎控除内で収まりました。
すると、Yさんが改めて仰いました。

「自分も老い先短く、無駄に財産を持とうと思わない。
 はじめから、Xの兄弟たちに直接相続をさせる良い方法はありませんか?」
「私が相続してしまうと、私の相続のときに、AとBの税金額が多くなるでしょう?」

相続権を下位の順位に繰り下げるには、Yさんご自身が相続しないことにする、
として、相続放棄をするという方法をご提案しました。

実は、Yさんは今回の相続だけでなく、次に起こるであろう自分の相続時のことを懸念されていたのです。
なぜなら、この時点でYさんの資産は、ご主人から相続分を含めて、すでに4000万円を超えていたからです。
さらに、ここにXさんの相続財産がプラスされれば、資産額はより大きくなり、
そうなれば、自ずと、先々の相続税の負担も大きくなる…。
つまり、AさんとBさんがお母様のYさんのご相続をする時に、
残された家族にいらぬ負担をさせないようにしたい、と考えられたわけです。
そして、Yさんのご希望通り、まずはYさんの相続放棄の手続きを家庭裁判所で行いました。
そうすることで、被相続人Xさんの兄弟姉妹であるAさんとBさんが新たに相続人となりました。
こうして、96歳の元気で聡明なお母様のこの判断により、
税金の負担なく財産は次世代へと相続されていくことになったのでした。

◆参考◆

●相続放棄

相続発生後、相続人は相続の権利を放棄することができます。
これを「相続放棄」と呼びます。「ゼロ円相続」と混同しがちなので注意が必要です。
また、今回はあくまで前向きな選択として用いられたレアケースでしたが、
多くは、借金などのマイナス財産が多い場合や、相続争いに巻き込まれることを回避したい、
といった理由などから選択されているようです。

●相続税の対策

相続税は、「3,000万円+600万×法定相続人の数」で算出した基礎控除額を超えた場合に、
相続税の申告が必要となります。
今回は、相続人がYさん一人で基礎控除額は3,600万円。
Yさんが放棄すると、相続人はAさんBさん2人となりますが、基礎控除額は変わりません。
もしYさんが放棄をしなかった場合、Yさんの財産はご自分の財産を加算して7,000万となり、
その後のYさんの相続では、相続人がAさんBさん2人で基礎控除額が4,200万円となるので、
相続税申告の負担は免れないところでした。

相続税の基礎控除に関する国税庁のタックスアンサー

   

  

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