Aさん
叔父の借金を返さないといけませんか?
相続放棄の及ぶ範囲
相談者Aさんとその兄Bさんのもとへ、金融機関から一通の手紙による連絡がありました。文面によると「叔父であるCさんが亡くなり、その借金を返してほしい」とのこと。
Aさん、Bさんは大変驚かれました。
というのも、AさんとBさんの父親Dさんと、母親及び祖父母はすでに亡くなっており、叔父Cさんの存在は、Bさんがかろうじて覚えている程度の親戚に過ぎなかったからです。
一番不思議に思ったのは、AさんBさんは、以前に父親Dさんの相続放棄を済ませていたのに、「なぜ叔父であるCさんの借金の督促を我々が受けなければならないのか」ということでした。
しかしながら、実は、AさんとBさんが、父親Dさんの相続時に行った相続放棄は、あくまでも、Dさんの相続に関してのみ効力を発揮するものでした。
今回は、Dさんの相続放棄を行っている・いないにかかわらず、代襲相続となるケースでしたが、そのことを知らず、「父親の相続放棄を行ったから、それ以降の相続でも大丈夫」と思い込んでいたことから、驚く事態となってしまったのです。
今回のケースのように、叔父Cさんの相続が発生した場合は、あらためて叔父Cさんの相続放棄の手続きを行う必要が生じます。
民法第939条(相続の放棄の効力)「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」
とあるように、AさんBさんが行った相続放棄は、あくまで「父親であるDさん」の相続放棄であり、「叔父であるCさん」の相続を放棄したことにはならないからです。
相続の仕組みを正しく理解することが大切です。