事例 123配偶者の守られるべき権利

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Aさん

主人が亡くなり、養女との関係に悩んでいます。

配偶者の権利を守る「配偶者居住権」をご存じですか?

配偶者の死後、住んでいた自宅を他の相続人に譲らねばならない…
といった状況になっても、令和2年4月1日施行の「配偶者居住権」という安心材料があります。

Aさんと夫Xさんは、夫婦二人で7年間、仲良く暮らしてきました。
お相手のXさんは64歳で初婚だったそうです。カルチャースクールで知り合い、ほどなくして結婚。
実は、Xさんには養女がいました。25年前に亡くなった妹の子であるBさんです。
彼女はすでに社会人で離れて暮らしていて、結婚に反対はしなかったものの、
やはり、突如現れたAさんとは距離を取っていたようです。

①配偶者の遺言書

そんなAさん夫婦に予期せぬことが起こりました。元気だったXさんが突然倒れてしまったのです。
病名は癌。それも、かなり進んでいたそうで、病床のXさんは、自分がもう長くはないと感じ、
遺言書を作成することにしました。
そして、1年後にXさんは亡くなりました。

②遺言書の内容と養女の想い

さて、遺言の内容を見てみると、Aさんが自宅不動産を引き継ぐ上、
今後の生活の為の預金も確保されており、Bさんが取得する財産よりも多くなっていました。
それでも、遺留分も考慮されているため、従わざるを得ません。
とはいえ、Bさんとしては、7年一緒に過ごしただけの妻よりも、
自分の方が少ないことに釈然としない気持ちだったようです。
あわや、Aさんが自宅に住み続けられない可能性も…。

そんな中、2週間経った頃にBさんがAさんを訪ねてきました。
Bさんは、いままでに養父Xさんからもらった手紙を読み返してみたようです。
それによれば、「Aさんと暮らせて幸せだ、とても大事にしてもらっている」
というようなことが書かれていたとのこと。

「男手ひとつで、自分を育ててくれた人が、一時でも夫婦として幸せに暮らしてきた…
いずれにせよ、そのことが再認識できたので、この遺言の内容を受け入れます」

その言葉に、Aさんは救われた気がしたそうです。
今では、AさんとBさんは”母娘”として、一緒に食事に行く仲だそうです。
自宅に住み続けながら、預貯金も相続できるようになりました。

◆参考◆ 配偶者居住権とは?

●背景①

配偶者の一方(例えば夫)が亡くなった場合、他方の生存配偶者(妻)は、
やはり、住み慣れた自宅に住み続けることを希望する場合が多いと思われます。
一般的に、高齢の方の場合、配偶者に先立たれ、
そのうえ、新たな生活環境を強いることは、
結果として、精神的にも肉体的にも大きな負担となりかねません。

●背景②

しかし、法定相続分で遺産分割をすることとなった場合、
配偶者の権利や生活が十分に確保できない場合がありえます。
なぜなら、法定相続人が配偶者と子の場合、法定相続分が2分の1ずつの配偶者と子では、
相続財産の自宅不動産と預貯金が同じくらいの価値の場合、
法定相続分通りでは、配偶者は、自宅を相続すると
結果的に預貯金を相続できないことになってしまうからです。
そうすると、住む家は確保できても預貯金を確保できすに、
かえって、今後の生活が不安定になっしまう恐れがあるのです。

●配偶者居住権(令和2年4月1日施行)

こうした背景から、民法(相続法)改正で創設された「配偶者居住権」という権利は、
例えば、配偶者が住んでいた建物が、亡くなった配偶者の相続財産である場合、
その所有権を子が相続したとしても、配偶者居住権という権利を設定し、
そうすると、妻は終身又は一定期間、「無償」でその家に
住み続けることができるという権利です。
また、この権利は、登記をすることで第三者に権利主張できたり、
さらに、相続財産として評価される一方で、所有権よりも低く評価されるため
所有権を相続する場合に比べて、預貯金等をより多く相続することが可能となったりします。

  

  

  

【 配偶者居住権についての詳細は法務省のホームページでもご確認いただけます 】

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