Aさん
夫の相続手続をしたいのですが、子供たちに色々な事情があり、悩んでいます。
相続人に様々なご事情がある場合も、しっかりとサポートいたします。
「様々な事情がある相続人ばかりで、夫の相続手続が難航しそうで悩んでいます。」
Aさんから、ご主人Xさんの相続でご相談をいただきました。
相続人は配偶者のAさんと長男、長女、次女の3人の子です。
しかし、相続人であるお子様たちに様々な事情があるとのことでした。
そのため、相続手続をどのように進めたらいいか、また相続税はどのくらいの負担となるのか、
そういった点で、悩んでおられました。
まず、それぞれの事情をお聞きすることに。
長男Bさんはアメリカに居住しており、しばらく日本に帰って来られないという事情。
長女Cさんは、結婚後に病に倒れ、障害をお持ちで寝たきりの状態という事情。
唯一、次女Dさんが、Xさんの近くで暮らし高齢のAさんを支えているとのこと。
相続財産は預金のみですが、相続税の基礎控除額を超えるため、申告が必要でした。
一般的に、遺言書がない場合には「遺産分割協議書」を作成し、各相続人が実印を押印します。
ところが、今回、相続人である長男と長女にそれぞれの事情があったため、
この部分について自分達で上手くできるのか、というお悩みの様子でした。
①長男への対応
そもそも、相続人が海外に居住されている場合、実印及び印鑑証明書が用意できません。
その場合は、現地の日本領事館での「署名(及び拇印)証明」で代用することができます。
領事の面前で、遺産分割協議書に本人が署名したことを証明してもらうのです。
アメリカにお住いのBさんへ、Dさんから連絡をしていただき、
遺産分割協議書をアメリカに郵送して、無事に署名証明を受けていただきました。
②長女への対応
一方、障害をお持ちのCさんについては、寝たきりとはいえ、意思疎通は可能とのこと。
さらに、電話でお話もできるようでしたので、Dさん経由でCさんのご主人にご協力を依頼。
無事、遺産分割協議書への署名押印や印鑑証明書をご準備いただくことができました。
なお、相続人が障害をお持ちで、今回のケースのような意思疎通が不可能な場合は、
後見制度を利用しなければならない場合もあります。
かくして、遺産分割の内容は、Aさんが2分の1、子三人は残る2分の1を3等分するというものになりました。
第一に、配偶者のAさんは配偶者控除の適用により相続税の負担はありません。
そのかわり、子3人は負担を負います。
しかし、Cさんは障害者であるということで、障害者控除の適用を受け、税の負担を免れました。
さらに、Cさんが受ける障害者控除の額が、Cさんが負担する予定の相続税額よりも多い為、
その超えた部分は兄弟姉妹であるBさんやDさんの相続税額から差し引かれることに。
結果的に、Bさん、Dさんがその恩恵を受けることとなりました。
協力をしていただいたおかげでスムーズに相続手続きが進行し、
また、結果的に誰も相続税を負担することなく完了し、
様々な事情がある相続人ばかりのお手続きが無事に済み、Aさんの悩みも無事解消されました。
◆参考◆相続税の障害者控除
具体的な控除額の例・・・
通常、相続税の障害者控除は、相続税の申告に際し、
相続人が85歳未満の障害者のときは、相続税の額から一定の金額が差し引かれます。
その額は、その障害者が満85歳になるまでの年数1年(1年未満は切り上げ)につき10万円で計算した額
(特別障害者の場合は1年につき20万円)です。
例えば、相続開始時点で52歳4か月の場合、85歳-52歳4か月=32歳8か月、
10万円×33年(端数切上)=330万円が相続税額から差し引かれることとなります。
他の相続人も軽減される可能性・・・
この障害者控除額が、その障害者本人の相続税額よりも大きい為、控除額の全額が引ききれない場合は、
その引ききれない金額を、その障害者の扶養義務者(配偶者、直系血族、兄弟姉妹のほか、
3親等内の親族の内一定の者)の相続税額から差し引くことになります。
つまり、障害者でない方も、税の負担が軽減される場合があるということです。
なお、障害者控除は、相続や遺贈で財産を取得することが要件の一つになっていますので、
障害者控除の適用を受けるには、その障害者は少額でも財産を取得しておく必要があります。
※アドバイス※
上記のケースでは他の相続人にも負担軽減の恩恵がありましたが、あくまでもケースバイケースとなります。
様々な事情がある場合、まずはお気軽に当センターへご相談ください。