事例 106遺言書に込められた父の想い。

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Aさん

父親の書いた遺言書がでてきました。
どのように手続きをしたらいいでしょうか?

直筆の遺言書は「検認」をしないといけません。

「父の遺言書が見つかりました。どのように手続きしたらいいのでしょうか?」
そう言ってご相談にみえたAさん。
どうやら、亡くなったお父様Xさんの遺品整理をしていたところ、自筆で書かれた遺言書が出てきたというのです。
Aさんのお母様はXさんが亡くなる5年前に亡くなっています。相続人はAさんともう一人、弟のBさんです。
Xさんが残した財産は、預貯金2,000万円とご自宅の不動産1,500万円でした。

◎弟との確執の背景

Aさんは、ずっとご両親と暮らしており、母亡きあとは父Xさんの介護もしてきました。
一方で、Bさんは葬儀に出はすれ、それまでは滅多に実家に顔を出さず、ほぼ音信不通の状態でした。
「そんな弟から相続についての電話があったんです!四十九日の法要も終わらないうちに!」
語気を荒げるAさんは怒り心頭のご様子です。無理もありません。
親の面倒を任せっきりにされたうえ、お金のことになると手のひらを返したように連絡をしてこられたのですから。
「今まで自分が面倒を見てきた親の財産を、何もしなかった弟には渡したくない」
そうしたAさんの本心から、Bさんと言い合いになってしまい、このままだと調停にもつれ込むかという時でした。
偶然にも、Xさんの遺品の中から、直筆で書き残された遺言書を発見したとのことでした。

◎自筆証書遺言の検認

自筆証書遺言は、自分自身で手軽に書くことができる遺言書です。
しかし、日付や署名・押印や封緘など、決められた様式を守らなければ無効となります。
そのうえ、自筆で書かれた遺言書は検認手続きを経ないと相続手続に使うことができません。
まずは、家庭裁判所に検認の申し立てを行います。そして、検認期日に出席した相続人の立会のもとで開封・検認が行われます。
なお、検認とは相続人に対して遺言の存在及び内容を知らせ、検認日以降の偽造や変造を防止するための手続きです。
したがって、遺言の有効・無効を判断する手続きではありませんので、注意が必要です。

まずは、遺言の検認を行うため、司法書士をご紹介しました。
それから、遺言執行者選任の申立を行うことにしました。
遺言書には「私の財産をすべてAに相続させる」と書かれていました。
それでは納得できないと、案の定Bさんから遺留分の減殺請求はありました。が、Aさんは言い争いをやめて兄弟での話し合いを行いました。
すると、遺留分の侵害分をAさんがBさんに現金で支払うことで合意し、その他の手続も無事に終わりました。
「まさか親父が自分の為に遺言書を書いてくれていたなんて。相続には無関心だったはずなのに…。」
思いがけないお父様のお気持ちに触れたAさん。だからこそ、意固地になることなく兄弟で話すことができたと言います。

遺言を自筆で書く父親のイラスト。遺言書がないよりはある方がいいですが、できれば公正証書で遺言を作成することをお勧めします。

◆参考◆

遺言作成時に気を付けなければならない「遺留分」

●遺留分とは

一定の相続人がもらうことができる最小限の額のことです。
今回のケースでは、すべての財産をAさんに相続させるという遺言でした。が、Bさんも相続人です。そのため、相続財産の4分の1を遺留分として主張できます。ゆえに、すべてをAさんにというXさんの遺志が実現しないことになります。しかし、遺言書がなければ、AさんBさんによる遺産分割協議(遺産分割調停)で、法定相続分(2分の1)を軸に分割することになったかもしれません。よって、Xさんの遺志は反映されたといえるでしょう。

●相続法の改正に伴う変更

2019年7月1日から改正された相続法が施行されました。その中で、「遺留分」についても大きな変更がありました。
改正前の民法では受遺者又は受贈者は、原則、減殺された遺贈又は贈与の目的財産を返還しなければならない(目的財産は共有状態となる)とされていました。が、目的財産を受遺者等に与えたいという遺言者の意思を尊重すべきだとの考えが取り入れられたのです。よって、目的財産を返還するのではなく、「遺留分侵害額に相当する金銭の支払いのみ」を請求できることとなりました。なお、直ちに支払えない場合は裁判所に支払期限の猶予を求める事も可能です。

参考サイト:法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の概要」(外部サイト)

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