Ⅹさん
妻が亡くなりました。30年も夫婦として連れ添ってきましたが、籍は入れていませんでした。自分はなにも受け取ることができないのでしょうか?
未入籍の場合は法的な「配偶者」として認められず、相続権はありません。
しかし、事実婚の状態が明らかな場合などは、遺族年金や未支給年金を受け取ることができます。
Xさん(男性60歳)が、妻のYさんが亡くなったとして無料相談にお越しになりました。
おふたりは30年間夫婦として連れ添ってきましたが、籍を入れておらず、Yさんとはいわゆる事実婚の状態で、マンションで一緒に暮らし夫婦として共同生活を送っていました。
Yさんには離婚した前の夫との間に、既に成人した子Aさんがいるということですが、そのAさんとは扶養関係にはなっていなかったということです。
なお、自営業のXさんに対しYさんは定年まで会社勤めをされており、老齢厚生年金を既に受給していました。
Yさんの相続財産である預貯金については、相続人であるAさんが受け取ることになるとしても、Yさんが受け取っていた年金についての未支給年金や、Yさんが亡くなったことによる遺族厚生年金については、Xさんが受け取ることができるか?
というのが、Xさんからのご質問でした。
まず、相続発生時に必ず相続人となる「配偶者」とは、法律婚にある者、すなわち届け出による婚姻関係にある者をいいますので、Xさんは相続人とはならず、預貯金等の相続財産を受け取ることはできません。
これに対し、遺族厚生年金を受け取ることができる遺族とは、配偶者、子、父母、孫または祖父母で、なおかつ死亡時にその者によって生計を維持されていた者とされています。
この「配偶者」には、届け出による婚姻関係ではない、いわゆる「事実婚関係のある者」も含まれます。XさんとYさんの間に、事実婚関係及び生計維持関係が認められれば、遺族年金を受給できることになります。
おふたりの場合、30年にわたり同居していた事実などから、夫婦としての共同生活を現実に営んでいたと認められる事実関係が認められ、さらに生計維持関係を証明することで、Xさんは遺族年金を受給することができました。
また未支給年金も同様に事実婚である配偶者は受給できるので、Xさんは受給することができました。
◆参考◆
●受給資格
遺族厚生年金を受け取ることができる遺族とは、配偶者、子、父母、孫または祖父母で、なおかつ死亡時にその者によって生計を維持されていた者とされており、受給資格の順位は、配偶者と子、父母、孫、祖父母の順になっています。
ただし、夫、父母、祖父母は死亡当時55歳以上の方に限られており、しかも支給は原則60歳からとなっています。また、子・孫は18歳到達年度の年度末を経過していない者または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の者、婚姻していない者に限られています。
●遺族年金での「配偶者」の定義
先述の通り、遺族年金における「配偶者」には、届け出による婚姻関係ではない、いわゆる「事実婚関係のある者」も含まれます。事実婚関係にある者とは、互いに協力して社会通念上、夫婦としての共同生活を現実に営んでいた者をいうと解されています。
今回のケースは戸籍上の配偶者がいない場合ですが、戸籍上の配偶者がいる場合であっても、事実上離婚状態にあり夫婦としての共同生活がないといいうる場合には、内縁関係にあった者を事実婚関係にある者と認めて、遺族年金が支払われたという最高裁の判例もあります。