まだ50代のお母様が急逝されたとして、20代のAさんが相談に来られました。
お母様は離婚した後、再婚せずに一人でAさんと、弟であるBさんの、子供二人を育ててきたとのこと。
社会人になって間もないAさんは、お母様の突然の死に、途方に暮れていました。
お母様は本業の他に、小さなアパートを購入し、その家賃収入で生計を立てていました。
主な相続財産は、親の相続で受けた自宅とこのアパートです。
アパートには金融機関の住宅ローンが付いていました。
住宅ローンには、団体信用生命保険といって返済途中で債務者が死亡した場合に、残りの住宅ローンを生命保険会社が支払うという保険が付いている場合があります。
ただ、アパートのような事業用の場合は、付いていないことが多いようです。
付いていなければ、AさんとBさんが住宅ローンを引き続き背負うことになります。
金融機関に確認したところ、団体信用生命保険が付いていることが分かりました。
お母様は自分にもしものことがあった場合でも子どもたちが住宅ローンで苦しむことのないよう、アパート購入の際、団体信用生命保険の付保にこだわったのでしょう。
お母様の配慮でAさんBさんが債務を負うことはなくなりました。
ご自宅の資産価値とアパートの資産価値がほぼ同じことから、AさんBさんが不動産をそれぞれ相続していくことで協議がまとまりました。
アパートを購入したのも、不動産を自宅とアパートの二つにしておけば、将来、AさんBさんが遺産分割で揉めることがないようにというお母様の配慮かもしれません。
その他に調査をしていくと、AさんとBさんそれぞれが同額の受取人になっている生命保険が判明し、さらに積立介護費用保険への加入も判明しました。
介護を受けるのはまだ遠い先であったにもかかわらず、子供たちに迷惑を掛けることのないようにと準備していたようです。多額の解約返戻金はお二人で均等に分割しました。
子どもたちに迷惑を掛けないように財産を形成したお母様。
Aさんは「母には改めて感謝しています」と何度もおっしゃっていました。
自立した母親の、強さと優しさを感じた相続手続でした。